高橋留美子劇場
第1話『Pの悲劇』
高橋留美子信者歴20ウン年のオレです。 当然ビッグコミックオリジナルの一連の読切も初出時から読んでおります。 アレに毎回涙してしまうあたり、精神的に相当年食ってんなオレという気もします。 しかしこの作品群、絵的に凄まじく地味〜な地味〜な作風でありまして、 アニメ化してどんなプラスαがあるものなのか、 オレとしても、どうにも見当がつかなかったのも確かなんですな。 元々が短めの作品なので、30分に引き延ばすのも大変でしょうし。
でまぁ、不安の元にスタートしたわけなんですが、 やっぱり苦労しているのは否めないとは思います。 宇宙の映像が長過ぎるのには、ちょっとどうしたもんだか困りました。 あのシーン見て電波な作品なのかと誤解されたらヤだなぁ(^_^;)
作画的には、なんつーか80年代にタイムスリップしたような のっぺりした印象で良い悪い以前の問題のような感覚なのですが、 原作からして作画でどうこうって作品ではないので許容範囲。 あとは、豪華声優陣で安定した演技による味付けが楽しめるのが売りでしょうか。 (ならラジオドラマでも良いじゃんってツッコミは却下)
商店街のシーンなど、一連の多作品のキャラクターをモブで出演させてますね。 元が短編で繋がりがないので、統一感を持たせる為の工夫なんでしょうな。 そういう細かい部分はしっかり作り込んであるようなので、今後の作品も楽しみです。
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第2話『浪漫の商人』
『めぞん一刻』が終了して間もない頃に掲載された為、 当時は『裏めぞん』と呼ばれファンダム(言い方からして古いな(^_^;))内で 物議が醸された作品であります。 ここで縁に島本須美、別当に二又一成を当ててきたら祭りだったんでしょうが、 縁=雪野五月、別当=山口勝平という 『犬夜叉』カップリングを当ててきたのも、なかなか意味深いものがあります。 『貧乏は辛かった』『苦労を共になんてできなかった』と心中呟く縁の姿を 今の色ボケかごめに見せてやりたいですよ、えぇ。 変に昔の男に夢見ちゃうドリーム加減は、かごめと同キャラっぽくも感じますが。
前回の冗長すぎた宇宙のシーンに比べれば、 縁の結婚当初のカットなど、アニメオリジナルのアレンジが 随分良くなったように思いますが、クライマックスの縁が涙をこぼすシーンで 『あんなにボロボロ泣かせるのは違うんじゃないかなー』と思ったりもしたので 原作解釈はもう一踏ん張りして欲しいところ。 短い原作を30分に引き延ばすのが大変なんだろうな〜というのはわかるんですけどね。
あ、作画はあんなもんで十分十分。 キャラがカットごとに別人になったり、2コマで走り始めたりしない限り大丈夫です。 作画の美麗さを誇るような作品じゃないですしね、原作からして。
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第3話『おやじローティーン』
とりあえず、この作品感想における声優話を禁じてみるテスト。 どいつもこいつも内容に触れずに声優の話ばっかりしおってからに! そりゃまぁ、制作サイドからしてそれで売ってるってのもあるけどさー。
さて、この話、実は初出時からイマイチ好きになれなかったんですが(^_^;) オレも一時は北海道に単身赴任状態で一人暮らししていたわけですが、 扶養家族があるわけでもなく自分で望んで北海道の会社を選択したわけですし、 北海道マンせー! カニー、トウキビー! って感じだったんで 遠方に一人で飛ばされる悲哀のようなものに共感できなかったってのはあるかも。
あと、今どきあんな女子高生いないだろ絶対。オヤジ狩りされて終わり。 読んだ当時ですらそう思ったくらいですから、 最近の12歳少女が渋谷でデートクラブバイトなんてご時世では 受け入れられにくい話だろうな〜というのも容易に想像できます。
中高年リストラ世代向けのファンタジーなんですな。 シリーズ開始当初は女性を主人公にした話が多かったんですが、 ここ数年はオヤジから見て身につまされるような題材を取り上げ、 コミカルに描きながらも最後はホロリとさせるという形式で固まっている。 その見せ方はさすがにベテランだけあって非常に上手いんですが、 今回に関してはオレのアンテナとはちょっとズレていたような感じ。
原作では特に語り手はおらず、最後に妻のモノローグが入るだけなのですが アニメ版では息子を語り手役に置いてあります。 話をわかりやすくする為の変更点かもしれませんが、 元々淡々とした話なだけに、微妙な感じ。
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第4話『鉢の中』
このシリーズの中では、陰鬱な雰囲気が漂っていることから 最も好き嫌いの分かれる話であります。ちなみにオレは一番好きだったり(^_^;) 高橋留美子といえば女の暗い情念を描くことに定評があるわけですが、 夫を愛するあまりに、遺骨を義母と同じ所に置きたくない一念で 育てていた鉢植えの土の中に埋めてしまうという屈折しまくった愛情に 高橋留美子の真髄を見たっつ〜感じで好きなんですな。
アニメでは夫だけではなく義母のいまわの際の言葉で 嫁と姑の対立をより直接的に浮き彫りにしているのですが、 それによって、単なる嫁姑戦争的な、俗な話に成り下がった印象はあります。 幸恵が見ていたワイドショーの特集と同レベルの話っつ〜か。 植木屋の話のシーンを利根川の告白の後に持ってきたのも、 その方が分かりやすいという判断なのでしょうが、 幸恵が利根川に悪印象を持っていた時にポンと出てきたからこそ 意味のあるエピソードだったと思うんだけどなぁ。
タイトルの書体選びや利根川の表情の付け方、骨が出てきた時の演出など サスペンスドラマ仕立てにしたかったのだろうとは思いますが、 そもそもサスペンスでは無い話なので、全体的に空回りしていた感じ。
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第5話『迷走家族F』
高橋留美子といえば誤解、すれ違い、 『なぁんだ、そうだったのかぁ、こいつぅ』が定番中の定番ネタですが、 それを逆手に取った、最後まで『ど〜せ今回も誤解オチだろ』と思わせておいて 実は本当に一家心中するつもりだったという逆どんでん返しは 長年のファンにとっては、なかなか驚きの展開だったのですね。
逆にファン度が低い人から見ると『え、本当にそれ?』で拍子抜けということになる。 もちろん、はづきが一家心中をなんとか(そうと悟られずに)食い止めようとする 展開自体が面白いので、まったく楽しめないことは無いと思うのですが、 高橋留美子ファンかそうでないかによって楽しみ方がガラリと変わる作品ではあります。 最近読んだ京極夏彦の『陰摩羅鬼の瑕』に近いものがありますな。 (あっちは意味合いがまったく逆(ファン度が高い方が楽しめない)なんですが)
はづきのキャラデザインが原作に比べてかなりすっきりしたものになっています。 原作では全然萌えなかったんですが、なんか萌えキャラになってますよ! 萌えキャラの方が良いかというと、この作品の場合そういう訳でもないんですが、 まぁ、キャッチャーな要素が加わるのはアニメにとっては良いことですな。 それだけ見る人が増える可能性が出るわけですから。
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第6話『君がいるだけで』
アッチャラーさんに萌えるか堂本さんに萌えるかによって 見る者の人生経験やら何やらいろいろ計れてしまう作品。 ちなみにオレはアッチャラーさん萌えです。 いいんだ、オレは人生経験の浅い萌え系アニヲタでいいんだ・・・。
理不尽な客に対してはらわた煮えくり返るなんてのは、客商売をやっていれば 誰しも一度や二度ならず経験したことがあると思うんですが、 そこで本当に怒ってしまっては、逆に客が逃げてしまう。 正しいことを言うと叩かれる世の流れの中、取り残されていく切なさ。 どんなに真面目に熱意を持って取り組んでも、ダメなものはダメ。 実直すぎるからこそ、どんどん時流に乗り遅れていく悲しさ。 そういったものをシリアスに追求せず、さらりとした質感で描く今回は このシリーズの中でも一二を争う傑作とも言えます。
アニメオリジナルの演出に関しても、かなりこなれてきていて 特に文句をつけられるような所も無く、良くなっていたと思います。 この調子で残り半分も頑張って頂きたいところ。
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第7話『百年の恋』
ロッククライミングによる愛の告白が往年の『めぞん一刻』を思い出させて しみじみと懐かしさを感じてしまったオレです。
前回の『迷走家族F』が、誤解・すれ違いを逆手に取った作品だったのに対し、 今回は高橋留美子的には王道中の王道とも言うべきネタを各所に織り交ぜ りさを狂言回しにしたラブコメの小編として優れた作品となっています。 アニメ化にあたっても原作にかなり忠実で、ストレートな作り。 逆に言うと手堅過ぎてツマランって説もありますが、それは高望みってもんでしょう。 オリジナル要素は必ずしも上手く働いてないしね、このシリーズ(^_^;)
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第8話『お礼にかえて』
バカバカしさ全開で、個人的には好きだったり。 本っっっ当に何も無い話なので、駄作だと思う人も多いだろうなぁ。 いや、否定はしないですが。
とかく女性というのは派閥を作りたがる生き物なので、 あそこまで極端とは言わないまでも、あの種のイジメだのなんだのは マンションなんかでは実際によくある話だったりします。 その辺が理解できないと、感情移入ができなくてかなりツライかも。
つ〜か女王萌え(結局それか!)
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第9話『茶の間のラブソング』
いろいろな意味で切ない話です。 結婚記念日に帰宅しない夫、記念日のプレゼントを渡せなかったことが未煉で 成仏できないものの、『自分に気があるのでは』と若い娘に淡い想いを寄せる 夫の態度に嫉妬してしまい、それを言い出すことすらできない妻。 葬式ですら泣かなかったのに、妻の幽霊が成仏して、初めて泣く夫。
死に別れネタはある意味あざとい(©かってに改蔵)とはいえ、 毎回まんまと泣かされてしまう自分がいるわけで。 この年寄りめと言わば言え、ちくしょう!
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第10話『ポイの家』
原作からして『漆原教授・・・?』と突っ込みたくなること請け合いですが、 漆原教授の場合は本当にアフリカ偏執狂なのであって、 こちらは単に思い出をモノという形で残しておきたいという人であり、 残すモノは別にアフリカグッズだろうがコロコロホビーだろうが(え?) 何でも良かったりするのですね。そういう意味では、シーン切り替え時の アフリカのマスクが飛び交うアイキャッチは、ちょっと違うだろという気もします。 いや、尺が足りないのは十分すぎる程わかってるんですが!
どういうわけか家の前にゴミを捨てられてしまう夫婦の悲喜劇が表面上の物語なのですが、 夫婦の大切な思い出の品だからモノを捨てられないと言う夫と 思い出はきちんと心の中にしまってあるからモノなんていらないと答える妻という 部長夫妻の対比こそが、この作品の真の肝でありましょう。 捨てられてしまって、わざわざ廃棄場までゴミを探しに行く夫と 文句を言いながらもそれに着いていく妻。 男と女で形は違えど、長年連れ添った夫婦の愛情は一つであることが 実にさらりと描かれていて、アニメで見て改めて泣かせられました。 本当に、なんでもない話なのに泣けるんだよなぁ。
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第11話『日帰りの夢』
単行本未収録のエピソードですな。次の単行本は5年後かなぁ・・・(遠い目) 初恋の思い出を美化しまくった挙げ句、自分に都合の良い妄想に浸りきり 勇んで同窓会へと赴く中年オヤジ、しかし世の中そんなに甘くない ・・・と思いきや、実はホントに甘かったってあたりが ビッグコミックオリジナル中心読者層の心を鷲掴みって感じのお話であります。 けれども所詮夢は夢、結局は現実の中に幸せを求めるしかないのだというオチも含めて。
あのまま妄想通り志摩聖子と一夜のアバンチュールってことになれば 今度はワイドショー好みの主婦層あたりに受ける話になってきたんでしょうが、 アレは結局何も無いままに終わって、 最後の最後で現状の良さを再認識するというラストだからこそ 良い夢として閉じることができたわけです。 現実の生臭さを持ち込んだ瞬間、夢は夢でなくなっちゃうんですから。 そういう意味でも、ファンタジーとして正しい作りですね。
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第12話『Lサイズの幸福』
華子さんのキャラデザが原作とかなり変わってますね。 これまで主に作画方面は非常に原作に近く描かれていたのですが、 その積み重ねがあったからか、変わったと言っても違和感の無いアレンジで好感触。
このシリーズの中ではかなり他愛ない部類の話で、 『座敷わらしが家購入の邪魔をする』と聞いただけで 鋭い人ならオチが読めてしまうのではないかと思うんですが、 嫁姑の確執ネタをさらりと織り交ぜてきたりして飽きさせないのと 座敷わらし萌えー(違う)で乗り切れてしまうあたりは上手いですな。
でも、座敷わらしってのはそもそも家に憑くもので 人に憑いて移動するわけではないってのは、突っ込んじゃいけないお約束ですか? いやまぁ、そこに突っ込むような話でもないからいいんですが。
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最終話『専務の犬』
最後の最後で子安キター! (このシリーズの感想では声優ネタは禁じ手だったんじゃなかったの?>オレ) いや、高橋留美子作品においては子安はあんまり使われていなかったりするんですよ、 『うる星』でも『めぞん』でも『らんま』でも目立った役はもらってないし、 『犬夜叉』に至っては妖怪化した犬に惨殺される蛾の役ですからね! そういう意味で、この作品における声優禁じ手範囲内に、奴は含まれないのです! とても子安の役とは思えない、情けない中年オヤジ という扱いもマル(ラストの大芝居も含めて)
フツーここで叫ばれるべきなのは『最後の最後で平野文キター!』なんでしょうが それを叫ぶとオレ的には敗北ですからね! 確かに声優半廃業状態の平野文を引っ張り出してきたのはスゴイんですが。
さて、ラストを飾るのはタイトルのダブルミーニングも楽しいこの作品。 バブルも弾けて久しく、不況まっさかりの今となっては かなり現実離れした内容になってしまっているのは否めませんが、 こういった招かれざる来訪者をテーマにした短編は『うる星』時代からお手の物とあって カンナによって掻き回されていく一家の様子からラストのどんでん返しまでに至る過程が 実に秀逸に描かれているドタバタコメディーの傑作であります。
第1話『Pの悲劇』とまったく同じ構成の物語であるにも関わらず まったく違う内容、まったく違う読後感に仕上がっているのにも注目。 『Pの悲劇』を第1話に、『専務の犬』を最終話に置いたシリーズ構成の巧みさに脱帽。 序盤こそ不安な部分もあったものの、 全体的に原作ファンも未読の人も安心して見られる作りにしてくれたスタッフ様に感謝。
次回以降の『人魚の森』は、スタッフも変わりキャラデザも原作から大幅にアレンジ、 乱れ飛ぶ裸や流血シーンの数々はどう処理するつもりなんじゃろ〜と 不安も相当大きかったりするのですが、まぁ、生暖かく見守るつもりです。 『約束の明日』をラストに持ってくるあたり構成的には期待できるんですが、さて。
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